迎賓館赤坂離宮が通年で一般公開!国賓をもてなす外交の舞台を参観

2016年11月09日

これまで夏季の10日間しか公開されていなかった「迎賓館赤坂離宮」ですが、2016年(平成28年)4月から年間を通して一般公開されるようになりました。今回は、迎賓館赤坂離宮の見学を検討している人のために、見どころや参観の申し込み方法、料金についてお伝えします。

迎賓館赤坂離宮ってどんなところ?

迎賓館赤坂離宮は、建設されてから100年以上の歴史を持ち、さまざまな変化を遂げてきた建造物です。建物の歴史と、一般公開されるようになった経緯についてご紹介します。

●迎賓館赤坂離宮の歩み
迎賓館赤坂離宮は、外交のための社交場・鹿鳴館(ろくめいかん)を手がけた建築家・ジョサイア・コンドルの弟子にあたる片山東熊(かたやま・とうくま)により、1909年(明治42年)に建設された日本初の西洋風宮殿です。当時はまだ皇太子であった大正天皇がお住まいになる東宮御所として建設されましたが、実際にはほとんど使用されないまま、天皇に即位した後に名称を赤坂離宮と改められました。第二次世界大戦後、赤坂離宮の敷地や建物は皇室から国へと権限が移され、「国立国会図書館」「内閣憲法調査会」「東京オリンピック組織委員会」など、内閣や国会の公館として使用されました。

戦後の日本の国際社会への復帰が急速に進むにつれ、外国の賓客をもてなすための施設が必要になったことがきっかけで大掛かりな改修が行われ、1974年(昭和49年)に現在の迎賓館赤坂離宮が完成しました。迎賓館として生まれ変わった赤坂離宮は、2009年(平成21年)12月に国宝指定されました。今日に至るまで、首脳国会議や国賓を招いての晩餐会などさまざまな公式行事が行われる舞台として、重要な役割を果たしています。

●一般公開されるようになった経緯
これまで、迎賓館赤坂離宮は毎年夏季の10日間しか一般公開されていませんでしたが、2016年4月から、通年で公開されることとなりました。外交上重要な役割を果たす国の施設、また、明治期を代表する価値の高い建造物として、その意義をより多くの人に知ってもらうことが一般公開の目的です。ただし、迎賓館としての運営に支障がない範囲での公開のため、賓客があったり、国際会議などで使用されている期間は参観することができません。参観可能な日程は内閣府のWebサイトより確認ができるので、訪問前に必ずチェックしましょう。

一般公開されているのはどんな場所?

迎賓館赤坂離宮 正門
▲正門
一般公開では、前庭、本館及び主庭、和風別館の3カ所の参観が可能です。壮麗な外観や美しい装飾、豪華な調度品や絵画など、盛りだくさんな見どころをご紹介します。

●前庭
正門から迎賓館本館までの約220メートルの通りの両脇には、風情のあるクロマツが植えられており、この門庭を抜けると正面にたたずむ本館を間近に見ることができます。この正門から本館入り口までの門庭が「前庭」です。前庭は、世界各国からの賓客をお迎えする際に歓迎式典が行われる場所でもあります。迎賓館の正門は、創建当初は黒と金で彩られていましたが、改修の際に白と金に改められ、より柔らかく親しみやすい雰囲気になったという歴史があります。

●本館・主庭
・外観・正面玄関
迎賓館本館はネオバロック様式の壮麗な西洋建築で、欧米諸国の王宮の外観を模して造られています。シンメトリーで左右に広がる雄大な本館は、かなり距離をとらないと視界に収まりきらないほどです。建物自体は洋風建築ですが、細部には菊の御紋などの装飾が施されており、「和」との調和を見ることができます。

・中央階段
正面玄関から入ると中央階段があり、大ホールへとつながっています。床にはイタリア産の大理石が貼られ、赤いじゅうたんが敷き詰められています。フランス産の大理石の手すりの上には黄金色の燭台(しょくだい)が並び、階段を上ると2階大ホールの正面に出ます。

・彩鸞(さいらん)の間
幻の鳥・鳳凰(ほうおう)の一種である「鸞(らん)」と呼ばれる霊鳥をデザインした金色の飾りが名前の由来で、調印式や記者会見などに使用される部屋です。天井が高く、壁の大鏡に映ったシャンデリアが華やかな室内を演出しています。天井や壁、柱などには、天馬や甲冑、武器などをかたどった華やかな装飾が施されており、ナポレオン1世の時代にフランスで流行した「アンピール様式」というエキゾチックな内装が特徴的です。

・羽衣の間
フランスの画家が謡曲「羽衣」をモチーフに描いた天井画が部屋の名前の由来ですが、絵画の中に天女の姿は見当たりません。というのも、「天女は羽衣の間で踊る、着飾った女性たちである」という演出だからです。首脳会議の会合や、雨の日の歓迎式典に使用され、迎賓館の中では次にご紹介する「花鳥の間」とともに最大の部屋です。創建当時は「舞踏室」として造られたため、壁飾りやシャンデリアには楽器、仮面、花かごなどをモチーフにした装飾が施されています。高さ約3メートル、重さ約800kgもある大きなシャンデリアは息を呑むほどの美しさです。

・花鳥の間
部屋全体に施されている花や鳥モチーフの装飾が部屋の名前の由来です。創建時は「饗宴の間」と呼ばれ、大食堂として使われていました。現在は晩餐会や音楽会に使用され、130人までの会食が可能です。天井に描かれた36枚の油絵や、壁に飾られた大判の七宝焼きに見られる花や鳥の装飾も見どころです。特に七宝焼きは、明治時代にパリ万博にも作品を出品した画家・渡辺省亭(わたなべ・せいてい)が下絵を描き、七宝の天才と言われた名工・濤川惣助(なみかわ・そうすけ)が焼き上げた価値の高い美術品です。

・朝日の間
表敬訪問や首脳会議の際に使われる格式高い部屋で、朝日を背にした女神が描かれている天井画が名前の由来です。壁に張られているのは、金糸・銀糸を用いてビロードの模様を手織りで織り出す高級織物「金華山織」で、京都西陣で織られたものです。また室内の家具は、明治時代の創建時にフランスから輸入されて以来、大切に受け継がれているもので、迎賓館の歴史を今に伝えています。

・主庭
中央に大きな噴水と花壇がある全面砂利敷きの庭園が「主庭」です。大噴水や記念植樹木、盆栽などを見ることができます。
主庭の噴水
▲主庭の噴水

館内で禁止されている写真撮影も庭園では許可されているため、噴水越しに見える本館をバックに記念撮影するのもおすすめです。ベンチや休憩所で一休みするのも良いでしょう。

●和風別館
大改修の際に新たに建造されたものが、和風別館「游心亭」(ゆうしんてい)です。宿泊施設ではなく、海外からのお客様を和の空間でおもてなしするための施設で、比較的少人数での食事会やお茶会が催されています。主和室、茶室、即席料理室といった畳敷きの和室で構成されており、即席料理室ではカウンター形式で天ぷらや寿司が提供されます。見どころは主和室から眺める日本庭園の景観。大きなガラス窓から、建物の足元に広がる池や、紅白の梅が配された築山を見渡すことができます。訪れる季節によって異なる日本庭園の四季折々の表情を楽しみましょう。

一般公開の日程と見学の申し込み方法

公開されている場所によって参観のシステムや料金が異なるので、行かれる方は注意が必要です。

●申し込み方法・料金
・前庭
迎賓館正門から本館の外観までの見学ができます。
事前申し込みは不要で入場も自由、参観は無料です。
参観時間は10時から17時、最終入場は16時までです。

・本館及び主庭
迎賓館西門から入場し、本館内の4つの公用室と本館南側の主庭を見学できます。
各日定員は4000名まで、インターネット応募による事前申し込みと、当日受付・入場整理券配布による入場の併用となっています。
インターネット応募による申し込みは、内閣府の公式サイトから参観日をチェックし、日付ごとに定められた申し込み期間内に、同サイトの申し込み画面から応募します。先着順で4000名の参観者が決定され、当選の知らせと参観証はメールで送付されます。

個人の申し込みの場合は12時入場と14時入場各750名(計1500名)、団体での申し込みの場合は13時入場と15時入場各750名(計1500名)が定員です。残りの1000名が当日受付で見学できる人数です。

当日は、8時から整理券の配布が開始され、まずは10時入場分の約500枚を配布し、それがなくなると11時入場分約500枚が配布されます。決められた時間に整理券を提示して入場し、金属探知機による検査と手荷物検査の後に入場券を購入すれば見学開始です。

<料金>
個人(19名まで):大人1,000円/中高生500円/小学生以下無料
団体(20名以上50名まで):大人800円/中高生400円/小学生以下無料

・和風別館
迎賓館の西門から入場し、約45分間のガイドツアー形式で和風別館の見学ができます。ツアー前後の時間には、本館・主庭の見学も可能です。

1日6回の各回20名(計120名)が定員。インターネット応募による事前申し込み制です。
インターネット応募による申し込みは、本館及び主庭と同じく内閣府公式サイト内の申込画面から、参観希望日の参観開始時間(10:30~、11:30~、12:30~、13:30~、14:30~、15:30~のいずれか)を選択します。和風別館の見学は当日受付がないため、先着順で参観証を受け取った人のみが参観できます。あらかじめ決められたツアー開始時間は後から変更することができないので、応募の際はよく確認してから申し込むようにしましょう。

<料金>
個人(4名まで):大人1500円/中高生700円/小学生以下参観不可
※団体での参観はできません。
※中学生は20歳以上の大人の同伴が必要です。

●現時点で発表されている公開日時
11月中は、外国からの賓客への接遇のため一般公開は行われません。
12月以降の日程については公式サイトで随時更新されますので、希望の日がある場合は事前に確認するようにしましょう。インターネット応募の事前申し込みは、土日祝日は特に応募人数が多く、受付開始初日に定員が埋まってしまうこともあるため、ご希望の方はお早めに内閣府公式サイトをチェックされることをおすすめします。

迎賓館赤坂離宮へ行かれる方へ

●所在地
〒107-0051
東京都港区元赤坂2-1-1

●公開時間 
10:00~17:00(最終入場:16:00)

●休館日:毎週水曜日

●アクセス
JR中央線・総武線「四ツ谷駅」赤坂口から徒歩約7分
東京メトロ丸ノ内線「四ツ谷駅」1番出口から徒歩約7分
東京メトロ南北線「四ツ谷駅」2番出口から徒歩約7分

●内閣府公式サイト:http://www8.cao.go.jp/geihinkan/
※一般公開の日程は随時更新されるため、行かれる方は内閣府の公式サイトを事前にチェックしてください。

受け継がれる歴史と荘厳な美しさに触れよう

迎賓館赤坂離宮は、敷地内の建物・構造物のすべてが国宝に指定されています。東宮御所として創建されて以来、外交上の重要な決定がなされる舞台となった迎賓館の歴史に想いを馳せながら、1度参観に訪れてみてはいかがでしょうか?